今回はプライシングのテクニックの中でもメジャーな手法である「松竹梅のプライシング」について解説します。※「価格の掟」では「中間のマジック」と表現されています。
松竹梅のプライシングとは、
「3つの選択肢が提示された場合、多くの人は真ん中のものを選ぶ」という心理的な傾向を利用したプライシングのテクニックのひとつです。
何故真ん中を選択するのか?
これは行動経済学の分野における重要理論である「人は得をするよりも損をしたくない思いのほうが強い」というプロスペクト理論を用いることで説明が可能です。
プロスペクト理論を提唱したトヴァスキーらが行った研究では、品質と価格が比例した2つの商品を提示した場合と、最も高額な新たな選択肢を加えて3つの商品を提示した場合において、このような結果が確認されています。※商品・数値はイメージです。
真ん中が最も多く選択されることに加え、最も高い商品も購買されることで売上単価が増加することが感覚的にわかると思います。
このように、全く同じもの(今回は中間の商品)であっても、見せ方を変えることで、受け取られ方が変わることは「フレーミング効果」とも呼ばれています。
損失回避の心理を巧みについた手法
「人は得よりも損失を回避する思いのほうが強い」といういわゆる「損失回避」の点で考えると、真ん中を選択する理屈は以下のように説明できます。
- 最も安い選択肢:安かろう悪かろうのリスク(品質面の損失)
- 最も高い選択肢:払った金額程の効用を得られないリスク(金額面での損失)
安いほう、高いほう、いずれを選択しても損失を被るリスクをはらんでいることから、最終的に真ん中の選択に妥当性を見出す、といった理屈ですね。
応用編:さらに単価を上げるには
松竹梅のプライシングとは、顧客単価の向上を実現するために「3つの選択肢を用意する」というテクニックですが、この「真ん中を選択する」という法則を活用すれば、さらに単価をアップすることも可能となります。
例えば以下のように既に松竹梅のプライシングを実践しているケースを想定します。
「真ん中を選択する」という顧客の心理を考えると、以下のような値上げが考えられます。
単純に真ん中を値上げしているだけです。
時間とコストをかけ、集客増加施策を打って出るもの手ですが、プライシングテクニックを活用することで、このようにコストをかけず、すぐに売上を上げる手法もあります。
自社で扱っている商品でこのプライシングテクニックが活用できるようであれば、是非活用してみてください。