LTV(Life Time Value;顧客生涯価値)とは、
「1顧客が生涯に渡って、事業者にもたらす利益の総和」
のことを指しています。以下説明します。
はじめに
私が所属していた携帯電話業界では、昔からLTVという言葉はよく使われていましたが、広くこの言葉を聞くようになったのは、ここ数年(おおむね2010年以降)のような気がします。
要因としては、昨今の競争環境の激化や国内人口の縮小、市場の成熟化等の外部環境変化によって、新規顧客から既存顧客へマーケティングの重み付けが変わってきたことなどが挙げられます。
また、それ加えて、ビジネスにおける収益モデルの変化や技術的な要因も背景にあると考えられます。
具体的には以下です。
- 継続課金型のビジネスの増加
- 容易に取得可能になった顧客データ
<補足>
現在は、カーシェアリングやクラウド型のサービスに代表されるような「継続課金型」の収益モデルを採用する企業が増加しつつある。それに伴い、収益の考え方も時間軸で捉える機会が増えてきた(1.)。
また、ECやPOSレジが急速に広まったことで、顧客情報のデータ化は容易に。
顧客分析のハードルが大幅に下がったことで、「大きな利益につながる顧客=より継続的に購入してくれる顧客」に対する考察も深まってきた(2.)。
LTVという言葉が広く認知されてきたのは、上記のような要因も影響しているのではと考えています。
では以下より、LTVについて簡単に説明します。
LTVとは
LTVとは、事業者が提供する商品やサービスを顧客が初めて購入(利用)したときから、その事業者から買わなくなる(利用を止める)までの間に、合計でどれだけの利益をもたらしたかという指標のことを指します。
なお、事業者によっては、「利益」を「売上」に置き換えて指標とすることもあります。
「利益」についても、粗利(売上ー原価)を指標とするケースもあれば、粗利から顧客獲得コストや、その他主要な経費(1顧客を維持していくために必要なコスト)を除いた営業利益に近い値を指標にするケースもあります。
つまり、LTVに関する厳密な定義はありません。
あくまでも指標なので、何をもってLTVとするかは、各事業者の事情に合わせて決めていけばよいでしょう。
算定式
上述のとおり、LTVの算定方法は各事業者によって決めてよいものです。
ここでは一例として、携帯電話事業におけるLTVの算定式を説明したいと思います。
<LTV算定式>
- LTV=①(毎月の支払額(ARPU)×利用月数)-(②獲得コスト+③維持コスト)
②獲得コスト:新規顧客の獲得に関わるプロモーションコスト、代理店に支払う販売手数料など
③維持コスト:通信インフラコスト、店舗運営コスト、コールセンター運営コストなど、顧客の維持に対応するコスト
携帯電話会社が過剰なまでのキャッシュバックを提供してでも他社からMNPを誘っているのは、市場が頭打ちのため、他社から奪うしかないというマーケット上の理由もありますが、そもそもLTVが高い事業であり、多くの持ち出しをしてでも十分に利益を取り戻せるという、収益上の理由に支えられているものであるといえます。
LTVはP/L上に現れない経済パフォーマンス
特に、長期に渡って収益を生むストックビジネス型の事業では、その経済パフォーマンスを、P/LやB/Sで評価することは困難です。P/Lに表現できる数字は最長でも1年間分ですし、B/Sにおいても将来収入の価値を資産に計上できるわけでもありません。
LTVでは、より正確にとらえた顧客の経済パフォーマンスを表現することが可能となります。
まとめ
- 1顧客が生涯に渡って、事業者にもたらす利益の総和
- LTV=購入額×生涯購買回数-(獲得コスト+維持コスト)
- LTVは特に明確な定義はない。顧客が初めて購入(利用)した日から購入(利用)しなくなる日までに企業にもたらした価値を算定すればよい。
- LTVはP/LやB/Sでは表現できない経済パフォーマンスを表現できる